はなのやま鍼灸院ブログ「まねき猫日記」

アスペルガー症候群 ~発達障がい児童と母親~

鍼灸院では、発達障がい(のグレーゾーン)と診断された子の「小児はり」のご相談が増えています。

ADHD(注意欠陥・多動症)やアスペルガー症候群、及びそれらのグレーゾーン(診断は出来ないが経過観察が必要)の子が多いように思います。

小児はりの効果である「神経・精神の安定」「落ち着きや情緒の育成」を求められての来院。

診断名は同じでも、お子さんごとに様々な特徴・個性があります。

同様に、様々なタイプのお母さん(家庭・育児の環境)ともお会いするのです。


アスペルガー症候群の原因は、明確に解明されていません。

また、大人になるまでに(周囲との関りから学び、改善し)、社会的なコミュニケーションをとれるようになるケースがほとんどです。

それでもカウンセリングで伺えば、お子さんの症状を受け止めきれずに、自責の念から妊娠・出産そのものを後悔され、育児に疲弊されてしまっているお母さんも少なくないように思います。

母親が、育児の不安、孤立感、先行きの見えない暗闇の中におり、まるで「無限の不安製造機」のように心を疲れさせていたら・・・。

その負の感情は、必ずお子さんに伝播し、情緒や行動にネガティブな影響を与えてしまうと思うのです。


母親の不安を増長させるファクターは、発達障がいそのものに加えて、アスペルガー症候群の児童に対する、「社会や周囲の理解不足」「受け止めてくれる環境の狭さ」もあるように思います。

アスペルガー症候群をもっと理解すること、また、より多くの人に知ってもらうことは、症状の改善と同じくらい大切です。

お母さんにも、障がいを持ったお子さんにも、受け止める側の社会にとっても、不安なくポジティブに活躍しやすい環境が増えればと願い、(浅学・微力ではありますが)ブログさせていただきました。


【概念】

言語発達の遅れや知的障がいのない、自閉症に良く似た発達障がい(自閉症の70~80%は知的障がいを持つ)。
*「言語発達に遅れがない」の定義は、2歳までに単語を話し、3歳までに二語文を話すことができるとされています。

【症状】

社会性に関する症状
・社会性の質的障がい。「他の人と一緒の時どのように振舞うべきかわからない」など。
・他人の行動やしぐさから相手の感情を読み取ることが苦手です。
・自分の感情を(言葉を使わず)行動やしぐさで表現することも苦手です。

コミュニケーションに関する症状
・自分の思っている事をどう相手に伝えれば良いのかわからない。
・相手の言いたいことをどう理解すればいいのかわからない。
・行動、興味、活動の限定的で反復的かつ常同的な様子、つまり特定の物事に対して「こだわりが強い」ケースも多くみられます。

想像力に関する症状
・「自分が○○だったら」という、子供が想像で行う「ふり遊び」が苦手です。
・相手の状況を思いやれなかったり、自分のこだわりに対しては妥協や融通が利かないのも特徴です。

【原因】

現在、明確に解明されてはいません。

【好発】

以前は、ごく稀な症状と考えられていましたが、最近になって「200~300人に一人の割合で存在する」という研究結果もあります。

性差は、自閉症ほど優位性はありませんが、男性に多く発症する傾向があります。

【特徴】

・特定の物事に極端な興味と知識を持ち、並外れた集中力と記憶力を発揮します。

・興味を持った分野の知識量は半端ではなく、中学生にして大学教授並みの知識を持つこともあるのです。

・言語習得・知的障がいはないので、親は幼少期のユニークな個性として捉えていることも多く、障がいの発見は遅れやすい傾向にあります。

・同年齢・同学年での集団コミュニケーションが苦手です。

・運動、生活動作などに差し障りが生じて、一見、不器用に見えることも。

・人嫌いではありません。社交性に欠けるので孤立してしまうことも多いのですが、他人とのコミュニケーションを嫌う障がいではありません。

・自分の感情を表現できない為、周囲から「関心がなく、つまらなそうにしてる」ように思われてしまう事もありますが、本人はいたって興味津々であったりします。

・親しい人物と1対1ならばコミュニケーションが可能ですが、同時に沢山の人数と関わるのが苦手というケースもあります。

・音に敏感な児童が多いです。個人差はありますが、(ちょっとした物音でも)音に敏感に反応しやすい傾向がみられます。*成長する過程で聴覚の過敏は穏やかになる事が多いと考えられています。

【周囲の対応】

・アスペルガー症候群を良く理解し、不適切や風変わりな行動をとったとしても、それは発達障がい特有の症状として受け止めていただきたいのです。

・騒々しい環境が苦手なので、出来るだけ静かな環境に置いてあげて下さい。

・頭にきて感情的になったり、大声を出して叱ったりすることは逆効果です。

・一つの物事に強いこだわりと執着を持つこともありますが、それを無理に抑えつけずに、何かに生かす方向でやらせてあげてみてはいかがでしょうか?

・予測できないことや変化していくことに対して苦痛・ジレンマを感じるケースが多くみられますので、スケジュールや習慣の急な変更はなるべく避けましょう。

・明確に表現されない事(暗黙のルール、空気を読む、口調から察する)などの理解が難しいケースもあります。ルール・やるべきことの説明は明確・論理的にしてあげるのが良いのです。

・行間に意味を含んだ言い回し、あいまいな指示、皮肉は伝わらない事が多いようです。
*「空気を読みなさい!」「空気は読むものじゃなく吸うものだよ。」

・できるだけ肯定的に接し、褒めてあげることも自信につながります。否定的な言葉にとても敏感ですので、自信を失い、さらに怒られるような行動をしてしまうことが多いのです。

【予後】

一般に、大人になると症状は穏やかになって目立たなくなることが多いようです。

興味がある分野での、常人離れした知識・集中力・活躍によって社会貢献している方も多いのです。*技術職での優れた活躍が多い傾向がみられます。


【鍼灸の役割】

当院では、どの子にも同じく、東洋的な考え方に基づいた「小児はり」を行います。

全身(心)の調整により、「精神や神経の安定」「落ち着きや情緒の育成」を目指していきます。

これには、施術だけではなく、自宅や学校での日々の発育トレーニングと併用していただく事が重要です。

施術を始めた当初は「僕は、僕は、」と自分軸での会話しかできなかった子も、施術を重ねるにしたがって相手の話を少し余計に聞けるような、「耳のシャッター」が開いていくような変化がみられることがあります。

徐々にではありますが、友人や先生とのコミュニケーションが上手になるケースもみられます。

「以前より子供らしい遊びができるようになりました。」とのご報告をいただくこともあります。

また、2次的な症状として懸念される「高学年時の鬱傾向」においても、「精神や神経の安定」「落ち着きや情緒の育成」により予防や改善が期待できると考えられます。

【お母さんへ】

「ADHD」「アスペルガー症候群」「発達障がい」・・・などとネットで検索しても、逆に不安を増長させるワードばかりが目に飛び込んでくるものです。

お母さんお一人で孤独に悩まれずに。先々のことまでネガティブに考え過ぎに。


発達障がい児童を育てる母親は、「肝っ玉母さん」ばかりではありません。

お子さんの発達障がいを、客観的に捉える為のサポートも必要なのだと考えます。

ぜひお気軽にご相談だけでもしていただけたら、と思う次第です。

ブログ文章 橋本昌周

2019年05月16日

慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndorome)

慢性疲労症候群と診断され、来院された23歳の女性。

「病院では ”原因不明” と言われました。鍼灸で改善できないでしょうか?」とご相談をいただきました。

慢性疲労症候群は原因不明の疲労倦怠感や筋肉痛・関節痛などの症状を伴います。ベッドから動けなくなってしまう方もいらっしゃるほどの苦しさです。

彼女も就いたばかりの仕事を「耐えられない疲労感」から休みがちになり、ついには辞めざるをえませんでした。

そしてカウンセリングで伺えば、彼女の辛さは症状だけではありませんでした。

家族や周囲から、「疲れたくらいで・・・」「仕事もしないで寝ていてばかりで疲れるわけない」など病気を理解してもらえなかったこと、それにより、気持ちにどうしようもない焦りが生じたことが一番苦しかったと打ち明けられました。

さらに仕事を辞められたことで「自分が社会からどんどん離れていっているような隔離感」に陥り、精神的にふさぎ込んでしまわれているようでした。


「慢性疲労症候群」と慢性疲労は異なるものです。

名前が似ているせいで誤解されやすく、周囲の理解不足から症状以上に精神的に苦しめられてしまう方も少なくありません。

「慢性疲労症候群」を知っていただくことで、このような要らぬ苦しみを減らせたら、東洋的な鍼灸でサポートできることがあることを知っていただけたら、と思いブログさせていただきました。


【概念】

原因不明の重い疲労(労働や運動などが原因でないことが明らかなもの)が6ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたす状態。

完治例は少ないですが、対症的に投薬治療による疲労の軽減が行われています。

更年期障害や自律神経失調症などの疾患や、鬱などの精神疾患と誤診されることも多いようです。これにより「遠回りの治療」に長年苦しまれる方も少なくありません。

名前は似ていますが、原因のある「慢性疲労」とは異なるものです。


【症状】

・半年以上続く微熱(解熱剤などがあまり効果がないという特徴)

・原因のわからない強い全身倦怠感が伴います。
(*仕事や育児や介護などで、原因が思い当たる場合は「慢性疲労」とし慢性疲労症候群とは区別します。)

・筋肉痛(腰・肩・腕・脚・背中などの特定部位に)
激しい運動後の筋肉痛に近い痛み *動けないほどの痛みが出ることもあります。

・睡眠不足:寝つきが悪い。浅眠・早朝覚醒など。

・睡眠過剰:一旦眠ってしまうとなかなか起きられない。 昼間の異常な眠気。

・気分障害:鬱(うつ)に良く似た症状。 精神活動の妨げになることも。

憂鬱感や気分の落ち込みが続いて仕事を休んでしまう、「やる気が出ない」「何も手につかない」「続かずやめてしまった」など。

・注意力の低下
注意力・集中力の散漫(鬱の症状でもある)、物忘れ、最近のことを記憶できないなど

・喉の痛み(リンパ節の腫脹を伴うことも)
発症初期に出やすく、風邪を引いた時のような痛み、咳が止まらない、など。
*「治りにくい風邪」と勘違いして、受診・診断が遅れることも。

過敏性
光や明るさに対して過敏に。化学物質や食物に対するアレルギーの悪化など。

多汗
外気温に関わらず、暑くて汗が止まらなくなったり。
就寝中や起床時に寒気がするほどの寝汗をかいてしまうことも。


【原因】

原因は不明とされています。あらゆる年代や職業に発症が確認されています。
原因不明の微熱や疲労感が数か月以上続きます。

原因もしもその1:ヘルペスなどの体内潜伏ウィルスの再活性化が関連?
何らかの原因で免疫力が低下することで、(過去の感染で)体内に潜伏していたヘルペス・ウィルスなどが再活性化したのでは?という研究もあります。

原因もしもその2:ストレスによる免疫力低下説
発症患者のほとんどが「生活に強いストレスを感じていた」という研究結果があります。
ストレス⇒血中のNK細胞(免疫担当)の活性低下⇒疲労感として発症(*NK細胞の数が低下することは慢性疲労症候群の患者に共通して確認できる現象です)。

ストレス説に反論もあります:「全ての慢性疲労症候群の患者がストレスを感じていたわけではない」し、「NK細胞の活性低下はストレスだけが原因ではない」という考え方もあります。


【分類】

名前は似ていますが、疲労の原因がはっきりしている「慢性疲労」とは区別して、全く別の疾患として受け止めることで理解が深まります。

Ⅰ類:精神疾患を全く伴わないもの。

Ⅱ類:慢性疲労症候群の発症とほぼ同時に抑うつ状態が発症したもの。

Ⅲ類:抑うつなどの精神病理の後に慢性疲労症候群が発症したもの。

*日本ではⅡ・Ⅲ類が多く精神疾患との関連も研究されています。

*日本では 慢性疲労症候群を発症した人の半数以上が抑うつ状態に。また自律神経失調やうつ病などの発症後に慢性疲労症候群を発症するケースも多いのです。

・慢性疲労症候群に伴う鬱症状は、一般の鬱病とは別と考え、「慢性疲労症候群の症状の一つとしての鬱状態」と捉えます。


【投薬治療と生活改善】

・投薬によって免疫力を高めていく(疲労感改善)を目指します。

ビタミンC、ビタミンB12などとSSRI系(セロトニンの生成を促す)の抗うつ薬・精神安定剤の併用が効果的との研究もあります。

・免疫力向上の為に、早朝の朝日を浴びる(⇒セロトニンの合成を促進)。

・軽度の運動(疲労の残存に注意しながら) *激しい運動は意識が覚醒してしまい不眠が悪化してしまいます。

・禁煙(ビタミンの破壊を防ぎます)


慢性疲労症候群のような、現代医学でも原因不明とされる疾患は数え切れません。

日進月歩で研究が進められていますので、やがては原因が解明され、効果的な治療や特効薬が世に出ることでしょう。

ですが、それは明日かも知れませんし、100年後かも知れません。

その間もずっと、肉体的に、精神的に、慢性疲労症候群の方は苦しみ続けます。

 

【鍼灸による「治癒力」へのアプローチ】

病気の引き金となったのは心身の内に生じた「何らかの機能の異常」です。

科学の力では、その「何らか」を100%解明するには限界があります。


ヒトに備わった本能的な治癒力は、常に「何らか」を点検し、未然に補修を行います。

「原因不明の原因は、スグに体に見つけてもらい、寝ている間に体に修理してもらう。」

これが東洋的な考え方に基づいた「治癒(予防)」のプロセスです。

その方に本来備わった「治癒力」により、症状の改善や予防を促進させるのです。

 

ところが、その方の全身(心)にアンバランスや滞りが生じますと、生命力が低下し、本能的な「治癒力」の働きはセーブされてしまいます。


当院では、東洋的な考え方に基づいた鍼灸により、全身(心)に生じたアンバランス・滞りを改善し、低下した生命力・治癒力を補います。

「治癒力」を再び元気にすることで、原因から疲労・倦怠感を改善していくことを目指します。


治癒力を弱めてしまう、全身(心)に生じるアンバランス・滞りの主な要因としては、

1、先天的な(遺伝や体質的な)要因

2、飲食の偏りや不摂生、生活習慣や疲労・ストレス、過去にかかった病気や受けた治療などの後天的な要因

3、転倒・事故・ケガ・手術などの外傷性の要因

4、急激な環境の変化、慢性的な不安やストレス、ショックな出来事、恐怖体験など心因的な要因

5、加齢による老化などの生理的な要因

が考えられます。


脳が絶え間なく作り出す「疲労倦怠感」は、寝ても休んでも根本的には改善されません。

逃げ場がなく、とても「しんどい」ものです。

ですので、「楽になった」「軽くなった」という疲労感の軽減を実感できる「対症的な施術」も必要だと考えます。

ですが一層深い部分においては、全身(心)の調整により、(できるだけ早期に)機能異常を改善していくアプローチを行っていくことが、治癒力を高め、より根源的な改善につながると確信しています。

「心と体は一体である」。

当院では、そのような東洋的な考え方に基づいて「原因不明の症状」「ストレス疾患」を捉えます。

ある意味、誰もが心身症の予備軍。そんな時代に生きているようにさえ思えるのです。

ブログ文章 橋本昌周

2019年05月17日

SAD(Social Anxiety Disorder )~社会不安障害~

日常生活における不安障害を思いつくままあげてみますと、

・パニック障害 ・空間恐怖症(高所・閉所など)

・特定のものに感じる個人的な恐怖症

・強迫性障害 ・全般性不安障害

・急性ストレス反応 ・PTSD(外傷後ストレス障害)

SAD(社会不安障害)と、おおまかに分類できると思います。

こんなに沢山の不安障害があります。 現代社会がいかにストレスと不安の製造機であるかが窺える気がします。


☆SADチェッック 
下記の状況において不安や緊張を感じて声や手がふるえることがありますか?

□大勢の前で話さなければならない

□大勢の前で自己紹介しなければならない

□人前で指名されて、自分の意見を述べなければならない

□人前できちんとした挨拶をしなければならない

□権威ある人や社会的地位のある人と話さなければならない

□知らない人に電話をかけなければならない

□初対面の人とマンツーマンで話さなければならない

□面接で自分の考えや意見を伝えなければならない

□人が見ている前で署名や文字を書く

□なじみのない場所で外食をする

□上記の質問のいずれかの為に社会生活に大きな支障がある

上記の3つ以上が頻繁におこればSAD(社会不安障害)の可能性が疑えます。

SAD(社会不安障害)とはいったいどのようなものなのでしょうか?

【症状】

人前で、話す・文字を書く・食事などをすると、強い緊張や、緊張に伴い手足のふるえ・動悸・吐き気・冷や汗などを生じます。

【概念】

個人的な性格・性質(あがり症・緊張症)などと明確な区分はなく、状況に慣れることで症状が改善されればSADではなく、慣れても症状に変化がないようならばSADの可能性があると判断します。

過去の人前での大きな失敗や不安・緊張した状況が脳の扁桃体(恐怖や不安の中枢)にすり込まれ、同じような「人前」という条件に反射的に反応してしまうことも。

【好発】

SADで医療機関を受診するのは、働き盛りの年齢(人間関係が多彩で仕事上人前で失敗できず、初対面の人ともそつなく接しなければならない)が多いのですが、その人たちも多感な中・高生時代に発症されていることも多い傾向があります。

【社会性】

・成人SAD患者の20%が無職です・・・面接・就職・仕事・人間関係がスムーズに行かない、能力や才能を生かせるチャンスを逃してしまうなど。

・成人SAD患者の60%が未婚です・・・異性とうまく付き合えない→非婚や晩婚など。


当院では、このSADを、「精気の虚から生じる強い上実下虚」の状態と捉えます。

では「精気の虚から生じる強い上実下虚」とは、どのような状態なのでしょうか?


蓄積された疲労や精神ストレス、飲食や生活習慣の不摂生、過去の事故や手術などの影響、強い憤りや不安・恐怖体験などにより、全身(心)の気(エネルギー)が上下に分離してしまうことです。

昔のお風呂で例えますと、上がすごく熱くなって(実)下は冷たいまま(虚)の状態です。

かき混ぜて温度を均等にすると心地良いですよね。

健康とはお風呂をかき混ぜた状態のことです。


ここでは熱と冷えという表現をしますが、温度の意味だけではありません。

体内で一塊であるべき生命エネルギーが、病的に上下に分離した状態と言えます。

分離された片方のエネルギーは上へ上へ。上部・表面にたまり密度が高くなります。

上部で密度が高くなりすぎたエネルギーにより、

上半身は、のぼせや円形脱毛、頭皮の感覚過敏・皮膚の症状・鼻炎や鼻血、耳鳴り、眼の症状、肩こり・首の痛み、腕や指関節の痛み、手の振るえなどが生じやすくなります(上実)。

反対にエネルギーの密度が低下した下半身は、冷えて力がなく、腰・膝・脚にだるさや痺れ・痛みなどの神経症状や関節症状が起こりやすくなります。また、泌尿器や排泄機能・生殖器の機能失調などの症状も出やすくなります(下虚)。


心身の疲れや疲労をとり、栄養・休養を充実させることで、お風呂をかき混ぜるように体の中のエネルギーが上下均等になります。

エネルギーが上下に分離してしまうのを留める力が湧いてきます。

昔の人が言った「頭寒足熱」という養生法もまさに的をえたものであるといえますね。

当院のバイブル「東洋医学 第1巻上実下虚論 たい焼き編」によりますと、

「箱詰めがへたくそなたい焼き屋のたい焼きはうちに持って帰ると、あんこが頭のほうにぎゅっと詰まって膨らんで、尻尾のほうはスカスカになっていることが多い。」ということらしいです。


東洋的な考え方に基づいてみれば、SAD(社会不安障害)も、その時の心身のバイタリティの低下で生じやすくなると言えます。

SAD(社会不安障害)の原因となりやすい、心に刻まれるようなあせり、緊張、不安、恐怖も、

その時期の慢性的な疲労や精神ストレスなどによる「精気の虚(エネルギーの弱まり)」により強い上実下虚が生じ、

通常よりも、より敏感に(大きなものとして)受信し、心(脳)に刻み込まれてしまった可能性もあると考えられます。

初期の発症が多感な年頃に多いというのも、日常の精神ストレスやわだかまりを、より敏感に(大きくなものとして)感じてしまうことと関りがあるようにも思えるのです。


当院ではこれを、心身の疲れから生じる「精気の虚(エネルギーの弱まり)」により、全身(心)を循環し続けているべき気(エネルギー)が偏って滞ったものと捉えます。

当院で実践する鍼灸・積聚(しゃくじゅ)治療は、東洋的な考え方に基づいた全身(心)の調整により、精気の虚(エネルギーの弱まり)を補い、上実下虚を改善(お風呂をかき混ぜて丁度良い温度に)することを目指していきます。

*過去のケガ・転倒・ムチウチなどによる外傷性の要因が確認できれば、その部位には補助的な施術が必要になります。


「原因がわかるだけでも救われる」

長年のSAD(社会不安障害)の症状で苦しまれている方の中には、そう思われる方もいらっしゃるかも知れません。

全てのSAD(社会不安障害)の原因が「上実下虚」だとは決めつけられませんが、発症した時期の慢性的な疲労・精神ストレスなどの状況を見直してみられてはいかがでしょう?

解決のヒントは、睡眠・栄養・生活習慣の改善・気分転換などによる心身の休養(生命エネルギーを補うこと)にあるかも知れません。

ブログ文章 橋本昌周

2019年05月18日

非定型鬱(うつ)~誤解されやすい気分障害~

最近では、従来のメランコリー型のうつとは違う「非定型うつ」がみられます。

20~30代の女性に多いように思います。

非定型うつの特徴としては、「楽しいときには楽しめる」というのがあります。

従来のうつは、「あらゆることに興味がわかない」「何をしても楽しめず気分が落ち込む」というものが多かったのですが、この”非定型うつ”は「好きなことをやるときには元気が出る」傾向があります。

ですので周囲から「仮病・なまけ・甘え」と誤解されてしまいやすいのです。


従来型のうつとの相違点をいくつか挙げていきます。

・夕方に気分が落ち込んだり不安になる(従来型は、朝がつらい)

・食欲でストレスを解消しようとする為、体重が増加(従来型は、食欲わかず体重は減少)

・いくら寝ても寝たりない(従来型は、寝付き悪く眠り浅い 早朝に覚醒してしまう)

・強い疲労感(手足が鉛のように感じる)

・人に拒絶されることに過敏になる

・いらいらして集中力わかず、すぐにカッとして相手に攻撃的になる

・嫌われたと感じたり、面倒くさくなると関係を完全に切ろうとする

・従来のうつに処方されていた薬による改善がみられない。

このことから以前は「鬱(気分障害)」という診断ではなく「気分屋」・「ヒステリーの症状」として受け止められてしまったことも多かったようです。

非定型鬱(気分障害)の方への対応も異なります。

・少し厳しく対応し、何か目標を持たせて励ますほうがよい(従来型は、優しく対応し、目標を設定したり励ましてはいけない)


鍼灸院に通われる方にも、ご本人に自覚がなくても「うつ傾向」の方は多くみられます。

他の愁訴で来院され、カウンセリングなどから「うつ傾向」が疑える人も多いのです。


東洋医学では「病は七情から起こりうる」と考えます。

先天的な要因や外傷・事故、強力な感染症などをのぞけば、「怒・喜・思・憂・悲・恐・驚」いう外因(感情・精神の乱れ)から、生体としてのバランスや免疫力や治癒力が低下し始めていくのだと。

心と体のアンバランス、抑えようがない衝動・葛藤・いらいら、食欲・睡眠の異常・・・

おそらくそれは誰の日常にも潜んでいて、空気中の見えない埃のように少しずつ蓄積され、ある日突然に発症する可能性があるのです。


心の病は、周囲の早期発見と「この人は病気なんだ」という理解ある対応によって予後が大きく変わってきます。

ストレス・フルな時代です。自傷他害の恐れがあったり緊急措置を要する重篤なケースでなくとも、誰もがプチうつ病傾向や心身症の予備軍であるように思えるのです。

こんな陰の時代だからこそ、「思いやり」「明るさ」といったお互いの「陽の気持ち」が救いになるのではないでしょうか?


「心の病気」は治すよりも、診断される前の予防が何より肝心です。

当院では「心の病」「心の疲れ」を、(何らかの要因が引き金となって)その方に生じた全身(心)のアンバランス・滞りにより「心の治癒力・抵抗力」が著しく低下している状態だと考えます。

東洋的な考え方に基づいた鍼灸により、全身(心)の調整から「全身(心)のアンバランス・滞り」を動かすことで、弱まった「心の治癒力・抵抗力」を補っていきます。

「お守り」のようにお薬が手放せなくなってしまう前に、ぜひ東洋的な鍼灸による心身のケアを予防・改善策の一つに加えられてみてはいかがでしょうか?

ブログ文章 橋本昌周

2019年05月19日

小児の食と成長~食べない子・好き嫌いが激しい子~

「好き嫌いをなくしたり、良く食べるようになるツボはありますか?」と、お母さんから「小児の食」に関するご相談をいただくことも多いのです。

「食欲に偏り」があったり、「好き嫌い」が激しかったり、毎食「食べたがらない」など。

何でも美味しくお腹一杯食べられる大人から見たら、気まぐれやわがままに見えることでしょう。


食べるとは、噛んでゴクンと「飲み込むまで」ではありません。その後の「消化器の働きによる栄養吸収」までを指します。

そして、食べたものを消化吸収するにはある程度の体力が必要です。

「消化吸収には体力を奪われる」

これは小児でなくとも、消化吸収能力が発達した大人も同様です。

体力がない時の”こってりした栄養価の高い食事”は、まるで食べ物が素通りするかのように(体が消化吸収を拒んで)、体力を奪うだけで便として出されてしまいます。

ですので病み上がりの方、断食を終えたばかり方には、(栄養を摂らせてあげたくとも)いきなりステーキを食べさせないのです。

栄養の吸収とは「食物の栄養価」だけで決まるものではなく、その時、その方の、消化吸収能力とのキャッチボールによって決まると言えます。


食べない子や好き嫌いの激しい子は、気まぐれでわがままなのでしょうか?

日々の臨床で子供たちに接していると、「この子は、本能的に自分の消化能力以上に食べないことで体力を守ろうとしているのでは?」思えることも多いのです。

また、生まれつき「特定の食品の消化吸収」が苦手な場合もあります。

例えば、牛乳を飲むと下痢をする、小麦食品(グルテン)を食べるとガスがたまり腹痛が出やすいなど。

「好き嫌い」も、その子の体調の負担になる栄養素を、過去の経験から本能的に拒絶しているのかも知れません。

過去には、幼児の頃に「喉に詰まって苦しい思いをした食品」や「食あたりを起こした食品」を一切受け付けなくなった子もおりました。

このような、大人にはわからない、小児ならではの警戒心による「好き嫌い」「苦手」のケースもあります。


小児は、毎日毎日ゆっくりと消化吸収の練習をしています。ある程度成長するまでは消化吸収力の成長にバラつきがあるのが当たり前です。

また成長して消化吸収力がついてくれば、今まで心身の負担になって食べられなかったものでも普通に食べられるようになることが多いのです。

見守るべき(改善していくべき)は、食べた量や品目だけではなく、その子の消化力(胃力)や食べ物に負けない(奪われない)だけの体力にあると考えます。

東洋的な考え方に基づいた「小児はり」は、その子の全身(心)の状態にアプローチすることによって日々の成長を促し、消化・吸収力の成長をサポートします。

「治療を受けた日は良く食べます。」とご報告をいただく事も多いです。

ブログ文章 橋本昌周

2019年05月20日