アスペルガー症候群 ~発達障がい児童と母親~

鍼灸院では、発達障がい(のグレーゾーン)と診断された子のご相談が増えています。

ADHD(注意欠陥・多動症)やアスペルガー症候群、及びそれらのグレーゾーン(診断は出来ないが経過観察が必要)の子が多いように思います。

小児はりによる「神経・精神の安定」「落ち着きや情緒の育成」を求められての来院。

診断名は同じでも、お子さんごとに様々な特徴・個性があります。

同様に、様々なタイプのお母さん(家庭・育児の環境)ともお会いするのです。


アスペルガー症候群の原因は、明確に解明されていません。

また、大人になるまでに(周囲との関りから学び,改善し)、社会的なコミュニケーションをとれるようになるケースがほとんどです。

それでもカウンセリングで伺えば、お子さんの症状を受け止めきれずに妊娠・出産そのものを後悔され、育児に疲弊されてしまっているお母さんも少なくないように思います。

母親が、育児の不安、孤立感、先行きの見えない暗闇の中におり、まるで「無限の不安製造機」のように心を疲れさせていたら・・・。

その負の感情は、必ずお子さんに伝播し、情緒や行動にネガティブな影響を与えてしまうと思うのです。


母親の不安を増長させるファクターは、発達障がいそのものに加えて、アスペルガー症候群の児童に対する、「社会や周囲の理解不足」「受け止めてくれる環境の狭さ」もあるように思います。

アスペルガー症候群をもっと理解すること、また、より多くの人に知ってもらうことは、症状の改善と同じくらい大切です。

お母さんにも、障がいを持ったお子さんにも、受け止める側の社会にとっても、不安なくポジティブに活躍しやすい環境が増えればと願い、(浅学・微力ではありますが)ブログさせていただきました。


【概念】

言語発達の遅れや知的障がいのない、自閉症に良く似た発達障がい(自閉症児童の70~80%は知的障がいを持つとされています)。

*「言語発達に遅れがない」の定義は、2歳までに単語を話し、3歳までに二語文を話すことができるとされています。



【症状】

社会性に関する症状・社会性の質的障がい。

「他の人と一緒の時どのように振舞うべきかわからない」など。

・他人の行動やしぐさから相手の感情を読み取ることが苦手です。

・自分の感情を(言葉を使わず)行動やしぐさで表現することも苦手です。


コミュニケーションに関する症状

・自分の思っている事をどう相手に伝えれば良いのかわからない。

・相手の言いたいことをどう理解すればいいのかわからない。

・行動、興味、活動の限定的で反復的かつ常同的な様子、つまり特定の物事に対して「こだわりが強い」ケースも多くみられます。


想像力に関する症状

・「自分が○○だったら」という、子供が想像で行う「ふり遊び」が苦手です。

・相手の状況を思いやれなかったり、自分のこだわりに対しては妥協や融通が利かないのも特徴です。



【原因】

現在、明確に解明されてはいません。


【好発】

以前は、ごく稀な症状と考えられていましたが、最近になって「200~300人に一人の割合で存在する」という研究報告もあります。

性差は、自閉症ほど優位性はありませんが、男性に多く発症する傾向があります。



【特徴】

・特定の物事に極端な興味と知識を持ち、並外れた集中力と記憶力を発揮します。

・興味を持った分野の知識量は半端ではなく、中学生にして大学教授並みの知識を持つこともあるのです。

・言語習得・知的障がいはないので、親は幼少期のユニークな個性として捉えていることも多く、障がいの発見は遅れやすい傾向にあります。

・同年齢・同学年での集団コミュニケーションが苦手です。

・運動、生活動作などに差し障りが生じて、一見、不器用に見えることも。

・人嫌いではありません。社交性に欠けるので孤立してしまうことも多いのですが、他人とのコミュニケーションを嫌う障がいではありません。

・自分の感情を表現できない為、周囲から「関心がなく、つまらなそうにしてる」ように思われてしまう事もありますが、本人はいたって興味津々であったりします。

・親しい人物と1対1ならばコミュニケーションが可能ですが、同時に沢山の人数と関わるのが苦手というケースもあります。

・音に敏感な児童が多いです。ちょっとした物音にも敏感に反応する傾向があります。
*成長する過程で聴覚の過敏は穏やかになる事が多いと考えられています。



【周囲の対応】

・アスペルガー症候群を良く理解し、不適切や風変わりな行動をとったとしても、それは発達障がい特有の症状として受け止めていただきたいのです。


・騒々しい環境が苦手なので、出来るだけ静かな環境に置いてあげて下さい。

・頭にきて感情的になったり、大声を出して叱ったりすることは逆効果です。

・一つの物事に強いこだわりと執着を持つこともありますが、それを無理に抑えつけずに、何かに生かす方向でやらせてあげてみてはいかがでしょうか?

・予測できないことや変化していくことに対して苦痛・ジレンマを感じるケースが多くみられますので、スケジュールや習慣の急な変更はなるべく避けましょう。

・明確に表現されない事(暗黙のルール、空気を読む、口調から察する)などの理解が難しいケースもあります。ルール・やるべきことの説明は明確・論理的にしてあげるのが良いのです。

・行間に意味を含んだ言い回し、あいまいな指示、皮肉は伝わらない事が多いようです。
*「空気を読みなさい!」「空気は読むものじゃなく吸うものだよ。」

・できるだけ肯定的に接し、褒めてあげることも自信につながります。否定的な言葉にとても敏感ですので、自信を失い、さらに怒られるような行動をしてしまうことが多いのです。



【予後】

一般に、大人になると症状は穏やかになって目立たなくなることが多いようです。

興味がある分野での、常人離れした知識・集中力・活躍によって社会貢献している方も多いのです。*技術職での優れた活躍が多い傾向がみられます。



【鍼灸の役割】

当院では、どの子にも同じく、東洋的な考え方に基づいた「小児はり」を行います。

全身(心)の調整により、「精神や神経の安定」「落ち着きや情緒の育成」を目指していきます。

これには、施術だけではなく、自宅や学校での日々の発育トレーニングと併用していただく事が重要です。


施術を始めた当初は「僕は、私は、」と自分軸での会話しかできなかった子も、相手の話を少し余計に聞けるような、「耳のシャッター」が開いていくような変化がみられることがあります。

徐々に、友人や先生とのコミュニケーションが上手になるケースもみられます。

「以前より子供らしい遊びができるようになりました。」とご報告をいただくこともあります。

また、2次的な症状として懸念される「高学年時の鬱傾向」においても、小児はりの効果である「精神や神経の安定」「落ち着きや情緒の育成」により予防や改善が期待できると考えられます。



【お母さんへ】

「アスペルガー症候群」「発達障がい」・・・などとネットで検索しても、逆に不安を増長させるワードばかりが目に飛び込んでくるものです。


発達障がい児童を育てる母親は、「肝っ玉母さん」ばかりではありません。

お子さんの発達障がいを、客観的に捉える為のサポートも必要なのだと考えます。

ぜひご相談だけでもしていただけたら、と思う次第です。

ブログ文章 橋本昌周

2019年06月21日